外壁に通気層って必要なのかなって。考えている人多いと思います。
サイディングを外壁に採用したくない。って考える人も少なくはないでしょう。
僕も同じです。真っ白な漆喰を外壁に採用したいな。なんてことをやっぱりよく考えたりします。
ですが、断熱が中途半端に強化され始め、気密も中途半端に施工されている家では、必ず外壁側に通気層を設けることが必要となります。
極端なことを言いましたが、これは、しっかりと施工している場合でも同じことが言えます。
万が一、壁内部に水蒸気が侵入した場合、外壁に通気層があることで、迅速に水蒸気を排出することができます。排出できない場合、内部結露問題が発生します。
内部結露などのリスクを少なくするためにも、外壁の通気層は必要となります。
今回は、外壁の通気層について考えていきます。
目次
通気そうは住宅にとってどんな役割を担っているのか
近年の木造住宅にとって、外壁側の通気層は必ずとは言いませんが、あるに越したことはありません。では、通気層がない場合、住宅にどんな影響が出るのかを考えてみましょう。
湿気が蓄積?
木造住宅の外壁に通気層がない場合、内部からの湿気が壁内部に蓄積されやすくなります。また、家庭内で発生する水蒸気(呼気、発汗、料理、お風呂、加湿器等)は壁内部に入り込み、木材や断熱材に吸収されてしまいます。
気密さえしていれば大丈夫・・・。というわけはありません。住宅に完璧はまずあり得ません。何かしらのリスクや不具合といったものが発生することを見込んでおくことが重要なのです。
もし、外壁側に通気層がなく、外壁に何らかのアクシデントが発生し、壁内部に水蒸気が侵入した場合どうなるでしょうか?
木材の腐朽
蓄積された湿気は木材の腐朽やカビの発生を促進します。木材は自然と湿気を吸収しやすい素材です。その湿度が高くなると、腐朽菌やカビの成長に適した環境が形成されます。これが構造の強度を弱め、耐久性を低下させる原因となります。
断熱性能の低下
湿った断熱材は乾燥している状態に比べて断熱性能が著しく低下します。また、湿気が断熱材に蓄積されると、その熱伝導率が上がり、エネルギー効率が悪化します。これにより、暖房や冷房の効率が下がり、エネルギーコストが増加することになります。
内部結露の問題
通気層がないと、外壁内部の温度差により結露が発生しやすくなります。冷たい外気と温かい内部空気が壁内部で接触します。すると、壁内部の冷たい部分で水蒸気が液体の水に変わります。この結露が壁材を濡らし、断熱材の性能を低下させ、さらには腐朽やカビの問題を引き起こす可能性があります。
通気層はこれらの問題を緩和するために重要です。また、壁内の湿気を効果的に排出し、壁体を乾燥させる役割を果たします。したがって、通気層を設けることは、家の長寿命化や、高性能化を保証するために非常に重要なのです。
透湿性のたかいモルタル系素材
透湿性モルタルは、その材質が湿気を透過させる性質を持っています。そのため、壁体が「呼吸」することを助け、内部の湿度を調整するのに役立つとされます。しかし、透湿性モルタルであっても、以下のようなリスクが存在します。
湿気の侵入
外部からの水分が壁体に侵入することがあります。これは雨水の浸透、高湿度の環境、あるいは建物の構造的な問題などによるものです。また、透湿性モルタルは湿気を透過させるため、水分が壁内に侵入した場合にも、それを完全に防ぐことはできません。
湿気の排出が遅くなる
通気層が存在しない場合、壁内に侵入した湿気の排出が遅れることがあります。なぜなら、通気層は壁体内の湿気を外部に向かって効率的に移動させます。しかし、透湿性モルタルは湿気を透過させることができます。ですが、通気層がなければ、壁体内の湿気が外部に排出されるまでの時間が長くなりますよね。そうなると、湿度が長期間高い状態が続く可能性があります。
結露のリスク
壁体内部の温度差により結露が生じる可能性があります。また、透湿性モルタルがあるにも関わらず、通気層がないと、壁内の湿気が冷たい外壁に触れて水滴となることがあります。この結露は木材の腐朽やカビの成長を促す原因となります。
構造的な耐久性の低下
なんらかの偶発的なトラブルにより、壁内部に侵入した水分が、長期間にわたって壁体内に閉じ込められると、その構造材料(特に木造部分)の耐久性が低下します。これは材料の劣化を早め、修理や交換のコストを増加させる可能性があります。
こういったトラブルを緩和するためにも、通気層って必要なんですよね。また、通気層により、へ機体内の湿気が効率よく外へ排出される。このような作用が働いて、壁の構造的な健全性が維持されます。
透湿性の高いモルタル材を採用する場合は、リスクに基づいた処置対応を事前に行い、適切な設計が必要とされます。
現在と過去
過去の日本の建築工法は、自然材料(土や竹)を利用しており、通気性が高く設計されていました。これにより、建物内の空気が自然に流通し、湿気が容易に外に逃げることができました。たとえば、伝統的な日本家屋では、すき間風が自然に通り抜けることで室内の空気を新鮮に保ち、湿度調整を自然に行っていました。
しかし、現代の建築では断熱性とエネルギー効率を高めるために、より気密性の高い設計が採用されています。また、断熱材の使用は室内の温度を一定に保ち、エネルギー消費を減らす効果があります。が、その一方で以下のような問題を引き起こす可能性があります。
湿気の蓄積
気密性が高い住宅は、内部の湿気が外に逃げにくくなります。これにより、結露やカビの発生リスクが増加します。特に、浴室やキッチンなど湿気が多く発生する場所では、適切な換気がなされていない場合、問題が顕著になることがあります。
結露の問題
内外の温度差が大きい場合、壁内部や窓の周辺で結露が発生しやすくなります。これは水蒸気が冷えて水滴となり、木材や他の建材の腐朽を引き起こす原因となります。
これらの問題を防ぐため、現代の建築では湿式工法の採用に際して慎重な検討が必要です。
湿式工法は、外壁に水分が侵入する可能性がありあます。そのため、高い気密性と組み合わせると湿気の問題をさらに悪化させる可能性があります。
通気層の設置や適切な換気システムの整備、さらには材料選定においても透湿性のあるものを選ぶ、リスクに対して事前に処置を行なっておくなどの対策が必要となります。
ドイツと日本
ドイツで開発された外張り断熱工法、特にEPS(発泡ポリスチレン)と塗り壁を用いる工法は、元々レンガ造、石造、RC(鉄筋コンクリート)造など、質量のある建物に適用するために設計されました。
これらは、熱容量が大きく、外部からの環境変化に対して内部環境が安定しているのが特徴です。そのため、外張り断熱が効果的です。しかし、この工法を木造建築に適用する場合、いくつかの重要な問題が生じる可能性があります。
問題点
湿気の管理
木造建築はその性質上、湿気に敏感です。外張り断熱工法を木造に適用する際、外壁材の下に湿気が溜まりやすく、これが木材の腐朽やカビの発生を促進することがあります。外断熱湿式モルタル工法は、外気温の変化により壁内に結露が発生しやすくなります。
構造的な適合性
EPSと塗り壁の組み合わせは、元々重量のある建築物に対して開発されました。しかし、木造の軽量な構造では物理的な負荷が増加し、経時的に構造的な問題を引き起こす可能性があります。また、木造建築においては、構造自体が動きやすく、それに伴い外壁材が割れるなどの問題が生じることがあります。
気候適応性
ドイツや北欧の気候条件と、それを採用しようとする他国の気候条件とは大きく異なる場合があります。例えば、高湿度の地域では、この工法による湿気の問題がさらに悪化する可能性があります。
他国での問題事例
スウェーデン、カナダ、アメリカ合衆国などで報告されている欠陥住宅の問題です。これは、外張り断熱➕湿式壁が原因の一つとされています。これらの国々では、気密性を高めた住宅で外張り断熱を使用することが増えました。しかし、湿気管理が不十分であったために、結露やカビ、構造の腐朽などが生じています。
まとめ
住宅の断熱や気密化が進む中、外壁の通気層の役割について考えてきました。結論としては、外壁側に通気層は必要です。なぜなら、断熱性能の低下や、腐朽などの問題を引き起こす、内部結露の問題をクリアするためには、必要です。
湿式壁(モルタルなど透湿性能の高いもの)を採用する場合は、しっかりとリスクを考え、設計することが必要となります。
KEEL PROJECTでは、湿式の外壁の採用を全て終了いたしました。これは、より長く、より安全な家に住んで欲しいからです。省エネエコハウ「風が住まう家」は高性能なエネルギー自立型の木の家です。
毎週土曜日に相談会や、家づくりセミナーを実施しています。ぜひ一度遊びにきてくださいね。