結露は住宅建築の中でも最重要な懸念事項となっています。自然素材の家だから・・・木の家だから・・・。なんてことは通用しません。
結露は自然素材の家だろうが、本物の木の家だろうが、条件さえ揃えば発生し家を蝕みます。
今回は、僕たちが家づくりの際に再三の注意を払う。「結露」について考えていきます。
目次
結露のメカニズム
結露は、空気中の水蒸気が冷却されて液体の水に変わる現象です。結露が発生する主要なメカニズムは次のように説明されます。
空気中の水蒸気(飽和水蒸気量)
空気は、一定量の水蒸気を含むことができます。ですが、その量は温度に依存しています。室温が高い場合はより多くの水蒸気を含むことができます。逆に、室温が低い場合は低下します。
飽和水蒸気料と言って、1m3の空気がその気温で含むことができる水分量の絶対量のことを言います。
室温が20度前後で、天井高2.5mの8畳の居室の場合、飽和水蒸気量は約570gとなります。570グラムの水分しか空気は含めないのです。ですが、僕たちは呼吸もしますし、汗もかきます。
また、健康のためにとわざわざ加湿をしたりもします。
そうなると、空気中の飽和水蒸気量は余剰となります。含めないんですね。この余った水蒸気が、壁の内部や、北側の収納の隅に入り込んで、結露を発生させる原因となります。
飽和点と露点
空気中の水蒸気がその温度で保持できる最大量に達した状態を飽和と言います。飽和している空気の温度をさらに下げていくと、空気は水蒸気を保持できなくなります。この時の温度を露点と呼びます。
露点は空気がどの程度の水蒸気を含んでいるか(湿度)によっても変化します。
冷たい表面との接触
暖かい空気が冷たい表面(アルミサッシ)などに接触すると、その表面近くの空気の温度が下がります。この空気が露点温度に達すると、水蒸気は凝結し、水滴へと変わります。
例えば、夏場に冷蔵庫からキンキンに冷えた缶ビールを取り出すと、表面が一瞬で水滴に覆われますよね。暖かい空気が缶ビールの表面に触れて、空気中の水蒸気が凝結した結果起きます。これが表面結露ですよね。
結露の発生場所
結露は特に外気の冷たい時期に室内の暖かく湿った空気が、窓や外壁などの比較的冷たい表面に接触した場合によく見られます。断熱が不十分な家屋では、壁や窓の内側が外気温により大きく冷やされ、その表面で結露が発生しやすくなります。
結露の影響
結露が繰り返し発生すると、その水分が壁材料や窓枠に浸透し、カビの発生や木材の腐食を引き起こす原因となります。これは建物の耐久性に影響を与え、室内の空気品質を悪化させる可能性があります。
結露を防ぐためには、適切な断熱と換気が必要です。これにより、室内の湿度を適切に管理し、表面温度が露点温度以下に下がるのを防ぐことができます。
日常生活と人体から出る水蒸気
僕たちは一体どれくらいの水蒸気雨を排出しているのでしょうか?
日常生活と人体から放出される水蒸気は、家庭内の湿度レベルに大きな影響を与え、結露やカビの発生、さらには健康問題にも関連します。以下に、それぞれの水蒸気の発生源とその詳細を説明します。
日常生活から出る水蒸気
料理
調理中は常に水蒸気が発生しています。お湯を沸騰させたり、オーブンを使用したりなど、常に水蒸気を排出していることになります。
洗濯と乾燥
洗濯機や乾燥機からも水蒸気は安定して放出されます。また、室内干しをする際、その水分が空気中に放出されることで、室内の湿度は上昇します。
冬場になると、加湿代わりに洗濯物を室内で乾かす場合があるとおもいます。乾燥がちなため、つい良かれとおもい行動しますが、水蒸気量は飽和になり、表面温度の低いアルミサッシが水滴だらけになりますよね。
これは、結露を自ら誘発していることになります。気をつけましょうね。
入浴とシャワー
お風呂と洗面室は特に高湿度のエリアとなります。入浴の出入りの際に必ず水蒸気は漏れ出します。漏れ出た水蒸気は気づかない間に、いろいろな場所へと移動します。
人体から放出される水蒸気
呼吸
人は呼吸をする際、肺から湿った空気を放出します。このプロセスは一日中続き、一人の大人が一日に呼吸から約300~500ミリリットルの水を排出すると推されています。
発汗
体温調節のため、または運動時に発汗をします。この汗が蒸発することで、空気中に水蒸気が放出されます。活動レベルや環境条件によって、この量は大きく変動します。
僕たちは生活活動をする際に、大量の水蒸気を放出しています。こういったことをよく理解しておかないと、なぜ結露が起きているのか、なぜカビが発生したのかなど原因を突き止めることができなくなります。
木の家だろうが、自然素材の家でも結露起きる
結露は、建材や住宅のスタイルに関わらず、室内と外部環境の条件によって発生します。自然素材の家だろうが、木の家だろうが結露は条件さえ揃えば発生していますのです。
結露のメカニズム
おさらいです。
結露は、空気中の水蒸気が冷えた物体に触れて、水滴として凝結する現象ですね。室内の暖かい湿った空気が、冷たいアルミサッシや壁面に触れると結露は起きます。表面温度が空気の露点温度以下になると水蒸気が液体に変わるからです。
木造や自然素材の家での結露問題
自然素材の家や木の家は、その素材が持つ特性である。「呼吸性」により、呼吸する家なんてことを言われています。これって、材料が一定の湿気を吸収放出する能力を持っているために起きます。
しかしですよ、これだけでは室内湿度レベルを適切に管理したり、結露を防ぐことにはつながりません。結露は条件さえ揃えば発生します。どれだけ木を使おうが、アルミサッシを使用しては必ず極端な温度差が生まれ、表面結露が発生します。
その結露部分に埃やペットの毛などが絡みつき、カビやアレルゲンなどの原因となります。
自然素材だから安心や、木の家は呼吸するから大丈夫なんてことはあり得ません。
一昔前の漏気がごく普通だった住宅の場合、自然の摂理で常に寒気が行われ、湿気や水蒸気などは常に外へと排出されていました。ですが、現代では、住宅の断熱化気密化が進み自然に任せた換気ではなく、強制的に狙って排気することを目的としています。
結露防衛4銃士
結露を防ぐために、生活習慣を変える?なんてことはする必要はありません。抑えるポイントは4つです。この4つをしっかりと意識して、家づくりを進めてください。
気密性の向上
気密性を向上させることは、計画的な換気を実行するため、断熱性能を維持するために必ず必要となります。また、室内側に防湿層として気密と併用することで、内部結露の発生を防ぐことにもつながります。
ただしです。これらは全て施工者に依存するものとなります。気密や換気、断熱や結露といったことに精通している建築士に依頼することが重要となります。
断熱の強化
高断熱化は、建物の外壁、屋根、床などに断熱材を施すことで、室内との温度差を小さく保つことにつながります。外の冷たい空気の影響を受けにくくしてくれるんですね。問題は施工精度です。適切に断熱が施工されていれば、室内の暖かい空気が外壁に触れて起きる内部結露は発生しません。
ですが、断熱がしっかりと施行されていない、(断熱欠損がある)場合や、気密施工がされていない場合は、内部結露の原因をつくってしまいます。
換気の最適化
高い気密性と断熱性を持つ家では、換気が特に重要になります。室内の湿った空気を適切に外に排出し、新鮮な空気を室内に取り込むことで、湿度が適正に保たれ、結露のリスクが減少します。
換気の方法としては、自然換気や機械換気(例えば、熱交換換気システム)があります。特に熱交換換気システムは、室内の暖かい空気から熱を回収しながら新鮮な外気を取り入れることができ、エネルギー効率の面でも優れています。
外壁側に通気層を設ける
万が一に壁内部に入った水蒸気を迅速に排出するためにも、外壁側には通気層を設けます。通気層がない場合、水蒸気はゆっくりとしか排出されません。その間に次の水蒸気が流れこみを繰り返し内部結露がひどくなります。
これら4つの要素をバランスよく整えることで、結露を効果的に防ぐことができ、さらにエネルギー効率の良い快適な住空間を実現することが可能です。設計段階でこれらの要素をしっかりと考慮に入れることが、家を健全な状態に保つために必要なこととなります。
まとめ
結露は条件さえ揃えば、自然素材の家だろうが、木の家だろうが確実に発生する。
また、僕たちが生活しているだけでも、大量の水蒸気を住宅内に放出していることを理解するとは重要度が高い。
なぜなら、しっかりと結露のメカニズムを理解し、水蒸気は常に発生していることを理解していれば、それに対応した家づくりができるから。
KEEL PROJECTでは、家づくりセミナーを毎週土曜日におこなっています。木の家をつくりたいけど高性能な家にする必要はある?や、アレルギー性の疾患をわずらっているが、どのように家づくりを進めていけばいい?などのご相談も増えています。
どんな些細なこともそのままにせず、ご相談ください。